ゲーム業界の市場、開発、人材、流通 4つの観点から、日々の最新ニュース、特集、連載企画を配信するゲームビジネスの明日を考えるメディアの「Gamebusiness.jp」にて、Nativexの寄稿記事が掲載されました。
2020年10月19日、Nativexは中国と欧米の主要アドネットワークを一元管理するマルチチャネル広告配信プラットフォーム「XMP」をリリースしました。中国に本社を構えるモバイルマーケティングプラットフォームである同社は、2017年に日本法人を設立しています。
これまで中国のみ、あるいは欧米のみのアドネットワークを一括管理するプラットフォームはあれど、それぞれを統合して管理できるサービスはありませんでした。そこで、編集部では2020年よりカントリーマネージャーを務める岩田行雄氏にインタビューを敢行。XMPの概要や特長を直接伺いました。
洋の東西を問わない唯一の広告配信プラットフォーム
――改めてNativexの事業について教えてください。
岩田:Nativexは、2016年にMobvistaに吸収合併された、メディアの運用管理を行う広告代理店です。中国インターネット協会が発表する「中国インターネット企業トップ100」に、Mobvista名義で2年連続で名を連ねています。日本法人では広告代理店としての機能のほか、モバイルアドネットワークの事業も展開しています。
――そして2020年10月、マルチチャネル広告プラットフォーム「XMP」をリリースされました。
岩田:極論を言えば、XMPは「広告代理店の機能をできるかぎりオートメーション化してしまおう」というコンセプトで作られたツールです。ある意味、自己否定のようなものかもしれません(笑)。
――そのような面もあるとしながらも、なぜこのようなサービスを展開しようと思ったのでしょうか?
岩田:ハイパーカジュアルゲームのデベロッパーさんなどから「代理店機能を安くオートメーション化できるといいよね」という声を聞くことが多くて、それなら本当にやってしまおうか、というのが前提にありました。
いわゆるガチャやアイテム課金がないハイパーカジュアルゲームは、動画広告でマネタイズするのが一般的ですよね。ゲーム内の広告枠が高く売れて、ユーザー獲得(アプリインストール)を安く出稿できればその差分が利益になる。でも、チームが小規模でリソースに余裕がなく、プロモーションかけるコストはできるだけ抑えたい……というところが多い印象を抱いています。
ハイパーカジュアルゲーム界隈だけを見据えているわけではないのですが、まずはそういったアプリ事業者の方たちに触っていただければと思っています。
――メディアバイイング機能が充実しているとうかがいました。
岩田:Google、Facebook、Apple、Twitterなどの欧米系トップメディアはもちろん、Tencent、Weibo、Baidu、Alibabaなどの中国系メディアも同時に扱えます。メディアバイイング機能を有するツールはほかにもありますが、欧米系と中国系をひとつで扱えるツールはまだなく、2020年末時点ではXMPだけです。
XMPなら、世界の名だたるプラットフォームをこれひとつで扱えます。同じクリエイティブを複数のプラットフォームに上げるために都度体裁をあわせて配信しなおす必要はなく、XMP上で配信チャネルを切り替えるだけで済みます。
――配信するプラットフォームを任意に選択することはできますか?
岩田:もちろんです。XMPをご利用いただければ、既存の広告配信プラットフォームよりも大きな工数削減が見込めるだろうと考えています。また、NativexはTopWorksというクリエイティブスタジオも有しているので、こちらと連携することも可能です。
――TopWorksとの連携というのは、具体的にはどのようなことができるのでしょう。
岩田:世界中のクリエイターネットワークにつながり、クラウド上で、スピーディーかつリーズナブルな価格でクリエイティブの制作を依頼できるというものです。Douyin、Instagram、YouTubeなどの広告は動画が多いですが、やはり作るのにはリソースがかかりますよね。そんなときにTopWorksで依頼を出せます。
また、新たな市場に参入するときはノウハウがないものですが、そういうときは現地のクリエイターに依頼すれば適したクリエイティブを制作してもらえるほか、そこからノウハウを得ることもできるでしょう。
――XMPを使わず、クリエイティブの制作依頼のみをすることはできますか?
岩田:それもできますよ。また、クリエイティブを依頼する際は、Nativex日本法人のカスタマーサクセス部門が間に入って代理店機能を担いますのでご安心ください。私どもに日本語で注文していただければ、あとはこちらで管理し、納品します。言語の壁は気になさらずとも大丈夫です。
また、AIを活用して、クリエイティブの良し悪しを数値で定量化する試みも進んでいます。どの係数が高ければより効果があるのかを標準化し、それをクリエイティブの指標に使おうというものです。こうした試みの進捗も、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
リリース間もない今はNativexが積極的にサポートを行いますが、ゆくゆくはそれすら必要とせず、XMPさえあれば広告配信もクリエイティブの依頼も容易に行える……というところまで持っていくのが理想ですね。
――利用料金が発生するとはいえ、そこまでいくと広告代理店事業にはリスキーな部分もあるのでは?
岩田:確かに代理店として売上をあげることと全て自動化していくことには二律背反的な側面もあるとはいえ、最適なROI(Return on Investment:1クリックあたりの投資効果の指標)を提供できる企業になるというのは、本質的に考えればそういうことなのかなと思っています。今はまだマニュアルでやらなければならないところもありますが、ゆくゆくは様々なクライアントのプロモーションにおける工数を自動化で低減させ、いかにおもしろいゲームを作るか、いかに戦略的な開発をするかにリソースを割いていただける世界を作っていきたいです。
XMPさえあれば、洋の東西を問わない広告配信もクリエイティブ依頼もなんでもできる。そういうワンストップな広告配信ツールにできれば、競合のサービスや企業と比べてもこれほどの強みはありません。
ゆくゆくは中国KOLのネットワーク構築も視野に
――XMPで効果計測は可能でしょうか?
岩田:XMPを使えば、Tenjin DocumentationやAdjustなどのような計測ツールとも接続できますので、どの程度マネタイズできているかはダッシュボードで逐一確認できます。LTVが上回っているかぎり広告配信を続けるようにしたり、細かな入札管理などの自動設定もできたりしますので、ビッディング担当の方はきちんと夜眠れるようになるのではないかと(笑)。
――クリエイターネットワークにクリエイティブ制作を発注できるというお話でしたが、KOL(Key Opinion Leader:中国語圏におけるインフルエンサーの総称)のネットワークも構築する予定はあるのでしょうか?できれば非常に面白い仕組みになると思います。
岩田:Douyinはネットワークでマッチングできる仕組みを既に持っていますので、同じようにネットワーク化できるだろうと踏んでいます。最初からあれもこれもできても複雑すぎて逆に利便性が下がる恐れもあるので、XMPが広く使われるようになったら上位バージョンとしてご提案できたらいいのかなと考えています。
ただ、これがハイパーカジュアルゲームの話となると課題もあって、そのネットワークができてプロモーションを依頼したところで、それが利益につながるのかはまだ未知数なんですよね。Tenjin Documentationでもインフルエンサーの伝播力は計れませんし、定量化が難しいんです。どのインフルエンサーがインストールに寄与しているのか、その施策がちゃんとマネタイズに繋がっているかは可視化する仕組みが必要だと思っています。
――とはいえ、中国市場への進出を考えるモバイルゲームメーカーを深く見据えていることが分かりました。
岩田:中国市場は現地法人というレベルでコミットしていないと基本的にはアプリ内課金ができませんので、マネタイズは広告によるものが主流になっています。XMPなら欧米諸国と中国への広告配信を同時に行えますので、日本にいながら中国進出を目指す際はぜひお声がけいただければと思います。
また、1月21日には、面白法人カヤックの畑佐雄大さんと、芸者東京のCEOである田中泰生さんをお招きして、アプリ事業者に向けた中国攻略セミナーを開催してお話を伺いました。お二人は、1つのダッシュボードで媒体を管理するという設計思想に共感してXMPを導入されたということですが、特に、XMPの優れている点として言及いただいたのは、広告運用を円滑にするという点です。ハイパーカジュアルゲームの広告運用では、毎週何十という新規クリエイティブをつくり、効果に基づいて差し替える、ということを実施しているのですが、媒体社の提供している広告管理画面では不都合なことがあります。しかし、XMPであれば、大量のクリエイティブ管理やキャンペーン名の変更がスムーズに行うことができ、運用効率を上げることができるのです。
※セミナーの模様は後日レポートとして掲載予定です。
――2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの業界の状況が大きく変動する1年となりました。最後に、岩田さんから見たモバイルゲーム市場、モバイル広告事業の現状をお聞かせください。
岩田:旅行系の広告は出稿が止まってしまっていますが、IT企業やモバイルアプリ事業者の方たちはステイホームによる需要増を生かしておられるようで、弊社もトータルとしては2019年後半より売上を伸ばしています。
ただ、この1年現場でひしひしと感じるのは、大企業はまだしも中小企業は本当に苦しんでいるということです。なんとかそういう人たちを元気づけたいと思いますし、弊社のXMPが支援する一助になればと思っています。
中国は政府の力がとても強いということもあり、このような情勢でも2019年以前の活気をほぼ取り戻しています。そんな市場への進出は活路のひとつになると思いますので、その際はぜひ私たちをご用命ください。みなさんが利益を出せるからこそ、弊社も利益を出せるのです。できることを全力でさせていただきます。
――ありがとうございました!
岩田氏もインタビュー中でお話しているように、「XMP」は代理店として二律背反的な側面をもっていますが、本質的にはクライアントの売上拡大・クリエイティブの品質向上に繋がるサービスであるともいえます。今後の機能拡張の展望も現代のマーケティングにマッチしたものが考えられているということで、ゲームのパブリッシャーやデベロッパーをサポートするプラットフォームとなりそうです。
Link:https://www.gamebusiness.jp/article/2021/02/04/18163.html